2024 絶海の孤島「利島」林道探索 弾丸ツーリング 5月12日(日)曇りのち雨のち晴れ 林道探索の書 〜今日もどこかで林道ざんまい〜 
2日目[3]  民宿かねに荘〜宮沢林道探索〜さらば利島!! もどる  






宿泊費 / 10000円 フェリー運賃 / 4470円 バイク輸送運賃 / 9881円 有料道路代 / 830円 トップへもどる


その後も雨上がりの宮沢林道を進んで行きますが、たぶんここが宮沢林道で最も海がよく見える地点。路肩が崖になっているせいか、そこだけ樹木が茂っておらず、樹林の切れ目からその先に海が見えていました。







路肩から見えていた海です。方角は利島の北北東方向で、水平線上に大島がうっすらと見えていましたが、どんよりと垂れ込める鉛色の雲に霞んでよく見えないな。







頑張って最大望遠で大島を眺めてみるとこんな感じ。今現在、ラッキーなことに利島では雨は止んでいますが、お隣の大島では今まさにこの瞬間に雨が降っているのか、大島の最高峰である「三原新山(758m)」の頂上付近は厚い雨雲に完全に包み込まれていましたよ。なので島の上部は全然見えていませんでした。







林道から雨雲に霞む大島を眺めてから前進再開。なおも緩くなだらかに登坂しながら進んで行きますが、その後はここぞというビューポイントが現れることもないまま、常緑照葉樹の鬱蒼とした森の光景が道すがらに続きます。







そして雨上がりということで路肩の藪草の茎をジワリジワリとよじ登る可愛らしいマイマイを発見しました。なんだか意地悪で塩をふりかけたくなっちゃいますが、これってもしかして伊豆諸島に分布する「シモダマイマイ」だとか?

シモダマイマイは関東南部から中部地方東部に分布する「ミスジマイマイ」の亜種で、伊豆半島南部と、伊豆半島から50km以内に点在する伊豆諸島に生息しています。発見地が伊豆半島の「下田」だったので「シモダ」と命名されていますが、伊豆諸島の島々で普通に見かけるでんでん虫ですね。

ちなみにマイマイ属は同種であっても殻の色や形状の地域変異が大きいのが特徴。したがって分類学上の名称を特定するのはなかなか難しかったりします。







林道入口から宮沢林道を進むことおよそ1km。ここでそれまでの緩い登りが下りに転じていました。この場所を「峠」と呼ぶにのは少々大袈裟かもしれませんが、これより先は下りになっているので峠であることには違いなかったです。







やや?! そして無名峠を通り過ぎた直後に路肩の急斜面の擁壁を登っていく怪しい階段が出現! それにしても「なぜここに階段が?」と不思議に思ってしまいましたが、どうやらここも宮塚山の山頂へと至る山道の1つらしかったです。

地理院地図や島内でもらえる「利島ウォーキングマップ」にも一応道筋は記されていますが、しかし、宮塚山山頂への登山ルートとしては決して推奨されていない模様。利島一周道路沿いの「南登山口」や「東登山口」からの山道ですら荒れた状態であることを考えれば、この先の状況は・・・うふふ、言わずとも想像できますね。







その後、緩く下りながらさらに進んで行くと、右手の斜面を路肩へと登ってくるモノラックのレールが現われました。ここまで道すがらには常緑照葉樹の森が広がっていましたが、林道を前進するにつれてヤブツバキ林が現われてきます。







斜面を覆う鬱蒼としたヤブツバキ林を目指して下っていくモノラックのレール。繁茂した下草によって銀色のレールが埋もれてしまいそうですが、別に荒れるに任せて放置で草ボーボーになっているわけではなくて、5〜9月のこれからの時期がヤブツバキ林の地面をきれいにするための草刈りシーズンらしいっす。







林道沿いで見かけたヤブツバキの木です。ツバキ属の植物は東アジアから東南アジアに250種類以上が分布していますが、日本に原生するのは太平洋側を中心とした本州以南のヤブツバキ、日本海側の豪雪地帯のユキツバキ、富山や新潟県のユキバタツバキ、九州以南のサザンカ、沖縄県のヒメサザンカの5種類です。

単にツバキという場合は園芸種を含みますが、原種であることを強調する場合には「藪に生える椿」ということでヤブツバキと呼ばれるみたいです。







10〜4月にかけて咲くヤブツバキの花です。5枚ある花弁は赤色もしくは白色でやや筒状に開くのが特徴。枝先の葉の脇に直径5〜7センチの花を一輪ずつ咲かせますが、花には蜜が多くて花粉は主にヒヨドリやメジロによって運ばれます。

現在、ツバキは日本だけで2200品種、世界中では6000品種が存在していますが、江戸時代に爆発的なツバキブームが起こり、園芸植物として天皇から将軍、武士、庶民にまで愛好されて多くの品種が生まれたのだそうです。

また、花弁を天ぷらにして食べる風習もあるツバキの花ですが、咲き終わったツバキの花はポトッと枝から丸ごと落下するため、その様子が「打ち首」を連想させるとして、武士はツバキの花を忌み嫌ったという俗説はよく知られていますね。







収穫されたヤブツバキの果実の中にある種です。秋に熟す実は直径3センチほどで中に3〜5個の種子が入っていますが、この種を砕いて蒸し、重しを乗せて抽出されるのが「椿油」で、整髪用、薬用、食用、工業用に使われるんだよな。

また、ヤブツバキの樹高は最大で15m以上になり、果実や種以外にもその材は緻密で耐久性が高いので昔から「櫛」などに利用されましたが、残念ながらヤブツバキで作られた櫛は「ツゲ」ほどの高級品とはみなされなかったそうです。

さらにはツバキは一年中、光沢のある濃緑の葉をつけているため、目隠しや風除けの垣根としても利用されてきましたが、葉の色が濃いので放置すると庭が鬱蒼としてしまう欠点があったりもします。







林道沿いに続くヤブツバキ林。至る所で斜面を下っていくモノラックのレールが敷設されているのを見かけましたが、宮沢林道もこの区間ではツバキ栽培のための農道としての役割が強いみたいです。本土の林道は木材搬出路としての役割がほとんどですが、そうではないというところが利島の林道らしいな。







藪を掻き分けるようにして斜面を下って敷設されていたモノラック。レールは錆びておらず現役で使用されているみたいですが、しかし、先述したように、利島のヤブツバキ林の中には高齢化や経済的理由によって手入れが行き届かず、雑木まみれになって放置や放棄で荒れている場所もあるみたいです。







あぁ、これは無残! これは放棄されたのか、それとも手入れされることなく放置が続いたためか、バキバキな雑木にまみれて荒れ果てたヤブツバキ林ですが、このように滅茶苦茶に雑木が繁茂しまくってワケの判らぬ状態になっている箇所も・・・。







季節は春なのになぜか落ち葉塗れになっていた宮沢林道をさらに進んでいくと、路肩に深緑色をしたシート掛けのパイプ車庫がありました。「これはなーに?」と思って立ち止まって覗いてみると・・・。







それはモノラックの車庫でした。中には荷車が連結されたガソリン(混合油)を燃料とする動力車が止められていましたが、パイプ車庫は雨除けですね。







そして車庫の先を眺めてみると、こんな感じで傾斜角度が45度もあろうかと思われる急斜面にレールが敷設されていました。昔はこのような急斜面を人が背負子で椿実を運んでいたそうですが、強力な運搬マシーンであるモノラックの登場により、女性やお年寄りだけでもツバキ栽培が続けられるようになったんだぜぇ。







その後もヤブツバキ林を眺めつつ進んでいくと、やがて利島一周道路へと斜めに突き当たって宮沢林道は終点となりました。

宮塚山の東に位置する林道入口からの距離はおよそ1.5km。延長距離は短くて、もはやダートは残存せず、正統派の林道ライダーには「用のない林道」であることは重々わかっていますが、しかしながら、ここはオフバイクでそう簡単にはやって来られぬ「離島の林道」です。そういう意味では走破後の達成感はあったかな。







林道出口付近で見かけた風格のある立派な「スダジイ」の木。伊豆諸島の島々に自生する唯一のブナ科の植物で、スダジイには鳥や昆虫が食べる「ドングリ」が実るので、島の生態系を司る重要な植物だったりもします。

利島には「東京都利島村指定文化財」の指定保存樹木になっているスダジイの木もありますが、利島の南側、宮塚山の山腹の森で生えている姿をよく見かけます。







利島一周道路への出口を振り返るとこんな感じ。林道標はおろか道標すら設置されていないので、事前情報なしに来島した場合は、「ここは林道である!」ことにはたぶん気がつかないと思います。

島嶼である利島に唯一存在する「林道」としては貴重ですが、しかし、惜しくも探索直前に舗装化工事が終了してしまい、残念な舗装林道となっているのが実情。それなのにいくら島嶼の林道とはいえ、この1本の舗装林道ために往復3万362円もの交通費をかけて利島に渡海するとは我ながらようやるわい・・・。がっはっは!







宮沢林道探索を無事に済ませ、林道で見上げた利島の空。相変わらず今にも泣き出しそうな灰色の雲が上空を覆っていましたが、この日は強風も吹かず林道探索直前になって雨が止んでくれたのは本当に本当にラッキーでした。

もちろん、超短期滞在の弾丸計画でわざわざ利島にやって来たからには、死んでも宮沢林道だけは探索する覚悟でしたが、本日中に自宅まで帰還せねばならぬことを考えると、本音を言えばやっぱり雨の林道探索は避けたかったからな〜。

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