2022 北海道林道探索ツーリング 8月16日(日)雨のち曇り 林道探索の書 〜今日もどこかで林道ざんまい〜 
20日目[3]  大樹町「晩成温泉 Bansei Onsen→ 大樹町「晩成温泉 Bansei Onsen もどる  






ガソリン給油量0L 給油回数0回 ガソリン代 0円 総走行距離  33.6 km / ダート走行距離 15.6 km トップへもどる


それにしても静かだなぁ・・・。生花苗沼の南岸に位置する海洋センターから正面に眺めた生花苗沼。方角は北東方向の海側になりますが、視界を遮る物はなに一つなくて、シ〜ンと静まり返った静寂な沼面がどこまでも広がっています。

そんな生花苗沼は日本の重要湿地に選定さた十勝海岸湖沼群の一つで、海岸沿いに堆積した長さ3kmの沿岸砂州によって海への開口部が塞がれた半陸封型の海跡湖。面積は1.75平方kmで奥行きは最大で1.9kmくらい。幅は約1.7kmで平均水深は1m前後で、水深3.6mの最大水深部は開口部付近に位置しているそうです。

画像前方の対岸にて、中央から右方向に向かって連なるのが太平洋と沼を隔てる沿岸砂州。砂州の標高はおよそ5〜6mほどありますが、高潮や台風時には砂州を越えて海水が流入するため、また、沼と海がつながった時には海水が沼内に流入するので、生花苗沼は年間を通じて汽水化しています。







こちらは海洋センターから左手に眺めた生花苗沼の最も奥まった北岸方向、すなわち沼の内陸側の景色です。

ぐるっと沼を取り巻く岸辺にはヤラメスゲやヨシ、マコモ、ガマなどが群落する「生花苗沼湿原」が広がっていますが、生花苗沼は砂州で海と隔てられた北東方向以外は、周囲をこのような湿地に囲まれているんですね。







海洋センターの艇庫のすぐ目の前に迫る生花苗沼の水際ですが、ヨットやカヌーで漕ぎ出すためのスロープが設けられていました。海洋センターに申し込めば、カヌーやヨットが楽しめますが、しかし、そんなことよりも生花苗沼で特筆すべきは、なんといってもこの沼にだけ生息する「巨大シジミ」の存在でしょう。

汽水湖に生息するシジミの大きさは一般的に20〜30mmほどでアサリよりも小粒なのですが、生花苗沼に生息するシジミの平均殻長さはなんと40mm! これまでに棲息が確認された中で最大のものでは57.4mmですが、それってスーパーで売られている普通のハマグリよりも大きいですよね。







というわけでこれが生花苗沼のシジミですが、うわぉ、なんじゃこの巨大なお化けシジミは! しかし、シジミがこのように巨大に成長するのは、十勝海岸湖沼群の中ではなぜか生花苗沼だけであり、北海道の中でも「網走湖」や「天塩川」のシジミと比較すると、生花苗沼のシジミは倍以上も大きいのだそうです。

なぜこれほど成長著しく巨大なのか、また、そのシジミが一般的な「ヤマトシジミ」であるのか不明な点が多くて調査が行われてきましたが、DNA鑑定の結果、巨大シジミの正体はヤマトシジミであることが示されたそうです。

気になる巨大化の原因ですが、沼の奥は塩分環境や水温環境が外海側よりも比較的安定していて、植物プランクトンが増殖しやすい環境が整っていることから、そのような環境の違いが大きさの違いに関わっている可能性が示唆れています。

少々難しい話ですが、具体的には生花苗沼ではシジミの個体密度が低い上に餌が豊富なことや、成長に好条件が重なって大型化したという説や、進化過程でより成長が良い方に適応度が高い条件があったため、成長の良い遺伝子が自然選択された結果、大型化したとされるなど諸説あるんですね。

また、最近の研究では「シジミの体内にはセルロース分解酵素が含まれていて、生花苗沼に多く生える葦の未分解物を有効に摂取した結果として巨大化した可能性がある」ことなどが新たに解ってきたらしいですよ。

ちなみに40mm以上の巨大シジミが多く生息するのは沼の奥で、海側には20mmほどの小さいサイズが生息しています。







こちらは右手に眺めた生花苗沼の東端方向。前方には長さ3kmの生花苗沼と太平洋を隔てる砂州が左右に連なり、画像右方向には生花苗沼の南端方向に向かって先細りしていく水域も見えていますが、沼の南端は最終的には水路のような細さにまで狭まっていくのは、晩成温泉出発直後に町道から眺めた通りです。

また、生花苗沼と外海とを隔てる砂州は通常は閉じられていますが、荒天によって砂州が自然に決壊することがあるのは湧洞沼や長節湖と同じ。それ以外にも年に1回、1日だけシジミ漁のために重機で人為的に決壊させているそうです。

砂州の決壊に伴い、生花苗沼では水量、推移が著しく低下して干上がることがありますが、その後は再び漂砂によって決壊した砂州の開口部は自然に塞がれます。そして砂州が閉じられていても、砂州の地下を通じて外海と生花苗沼との間で水の交換が行われているらしいです。

ちなみに「オイカマナイトー(生花苗沼」)という地名は、アイヌ語の「オイタ+オマ+イ+トウ」で、日本語では「越える+入ると+ところ+沼」という意味。つまり、地名からも時として沼に海水が流入することのある状況が分かるんですね。







生花苗沼では、シジミ採取を禁止しております。
採取した場合、漁業法で処罰されます。
大樹漁業協同組合
なお、生花苗沼では大樹漁業協同組合によるシジミおよびワカサギの漁業権が設定されています。なのでシジミの漁業権が設定されていない長節湖や、シジミのみ漁業権が設定されていない湧洞沼と同じに考えて、「個人で食べるだけだから」とこっそりシジミを採取すると、それは立派な「密漁」になるので注意してくださいね。

そんな生花苗沼のシジミ漁は、重機で砂州を決壊させて水位が下がって現れた干潟や浅場にて「手掘り採取」で漁業者によって行われます。採取された生花苗沼産の巨大シジミは町内のスーパーの店頭でその日に販売され、冷凍物なら通販で購入することもできますが、大半は珍しい水産物として東京方面に送られてしまうのだとか。

また、生花苗沼にはシジミの漁業権が設定されていますが、シジミ漁が行われるのは自然保護のため年に一度だけ。常に漁が行われるシジミの漁場にはなっておらず、珍しい手掘りのシジミ漁が見られるのは年に1日だけですよ。







しばらく生花苗沼の静かなたたずまいを眺めたら海洋センターを出発します。すぐに晩成温泉から通ってきた2車線舗装の町道に戻りますが、町道への合流地点で2車線区間は終了。舗装状態は引き続き続きますが、これより先は狭い1車線となって生花苗沼南岸伝いにさらに進んで道881(ホロカヤントー線)との合流地点を目指します。







えぇっ、まさかこのような所に「林道の証」が!? 海洋センター入口から1車線となった町道をさらに進もうとしますが、すると次の瞬間、路肩の藪の中に立つ白い鉄板標識を発見! 林道ではお馴染みである横向きの長方形というその形、そしてその大きさといい、これはもう「林道標」である予感がビンビンです!







おい、マジかよ・・・。白い鉄板は予想通り林道標でしたが、しかし、林道標白化現象によって、どんなに目を凝らしても林道名は確認不可な状態に陥っていたのを確認。僅かに「林道」および「林道管理者 大樹町」という文字のみ判読できましたが、林道標ハンター的にはこういうが一番ムカつく状態なんだよなぁ・・・。







民有林林道 生花沼線
してやったり! 林道標白化現象によって林道名は解らず終いと思われましたが、なんと、すぐそばにそれとは別に木製看板タイプの林道標を発見! こちらもかなりくたびれていましたが、「生花沼線」という林道名がバッチリ確認できました。

それにしても山岳地帯ならともかく、海に近い平野部のこのような場所に林道があるなんて予想外でしたが、うふふ、犬も歩けば棒に当たるってやつですなぁ! そして今回の北海道林道探索ツーリングでは、名のある林道を探索するのはたぶんこれがラスト。気合を入れて生花沼林道に入線させていただきます!







おい、マジかよ・・・。いざ生花沼林道に入線しますが、お待ちかねのダートは一向に現れず、すぐにここは残念な舗装林道であったことが判明。そりゃあ、来るものは拒まずで別に構いませんが、しかし、よりによって北海道林道探索ツーリングのラストを飾るシメの1本が舗装林道になろうとは・・・。







というわけで、道すがらには全く生花苗沼が見えていない残念な生花沼林道を進んで行くと、やがて右手に「生花苗沼野鳥観察保護施設」の入口がありました。

入口に設置された案内板によれば、ここは生花苗沼の沼畔に設けられた野鳥観察施設らしく、林道から200mほど森の中を進んだ地点に観察小屋があるとのこと。しかし、曇り空のこのような時に野鳥観察する気にはなれず、ここはパス。







野鳥観察保護施設に立ち寄ることなくさらに生花沼林道を進みますが、平坦コースが続く道すがらにはミズナラの森が広がっているだけ。林道のアスファルトは味気ないですが、森の雰囲気は悪くもありません。







林道の道すがらに広がる沼畔の森。人家はもちろん、野鳥観察施設以外にはなにもない森の中を林道は道881に向かって延びていますが、そんな生花沼林道が舗装化されたのは、以前ここに大樹町によるオートキャンプ場の建設計画があったから。

しかし、自然保護の観点から自然愛好団体によって建設計画の中止要請がなされ、オートキャンプ場建設はめでたく中止されたそうです。

でもその時すでに、オートキャンプ場の建設を前提としていた林道舗装化工事は終了していたため、なにも作らないわけにはいかないとのことで、仕方なく自然観察施設を建設する提案がなされ、生花苗沼野鳥観察保護施設が作られという経緯があります。

このようなトホホなケースは全国各地にあると思われますが、しかし、年間を通じて利用者もほとんど見込まれないこの場所にオートキャンプ場を作る必然性などないのに、下手な計画を打ったせいで林道が舗装化されちまったぜぇ! というわけで、オートキャンプ場建設計画と林道舗装化というキナくさい話でした。







その後も水辺は全く見えないまま生花苗沼の南岸沿いに進んでいきますが、林道の延長距離は短くて、およそ2.5kmで道881に突き当たって生花沼林道は終点となりました。見事なまでに林道出口の目印となる物がなにもありませんが、画像では前方が晩成温泉、手前がR336へと接続する大樹町「生花」方向になっています。







目印となる物はありませんが、その代わり道881側の出口というか入口にも林道標が設置されています。しかし、こんな感じで藪に埋もれているので、通りがかってもまず気がつかないことでしょう。したがって、もしも生花沼林道を訪れる場合は、晩成温泉側からの方が格段に分かり易いですよ〜。







生花沼林道から道881に突き当たったら、左折すると晩成温泉に戻ってしまうので右折してR336方向に進みます。ガラガラで無人状態であった道道を1.8kmほど進むと、やがて生花苗沼の東岸方向に向かう道が現れるのですかさず右折。







これが道881からの右折地点。標識の類はなにもないままいきなり未舗装が開始しています。残念ながら「林道」ではありませんが、このダートを適当に進んで今度は生花苗沼の北岸の景色を眺めてみようというつもりです。

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