2024 絶海の孤島「利島」林道探索 弾丸ツーリング 5月11日(土)晴れ 林道探索の書 〜今日もどこかで林道ざんまい〜 
1日目[4]  神新汽船「フェリーあぜりあ」で利島に上陸! もどる  






フェリー運賃 / 4470円 バイク輸送運賃 / 9881円 トップへもどる


フェリーあぜりあは定刻通り式根島を出港しましたが、将来的に式根島に上陸することがあるとすれば、それは御蔵島という利島以上の難関島を攻略し、その後に大島を訪れて伊豆諸島の林道を全て探索し終わった後だろうな。なぜならば、式根島は伊豆諸島の中では青ヶ島と共に「林道」が存在していない島なんだもん・・・。







式根島野伏港を出港直後に右舷デッキから右後方を眺めると、新島の最南端の神渡岬と、岬の南東の海上およそ530mに浮かぶ早島がよく見えていました。

ちなみに神渡岬には防衛庁の「航空装備研究所新島支所」、すなわちミサイル試射場があるので立ち入ることはできませんが、試射場入口付近は新島ブルーに輝く美しい海と神渡岬、そして岬の沖に浮かぶ早島を見下ろすことができる密かな「絶景」ビューポイントになっているので、新島を訪れた際にはぜひ!







式根島を離れるとフェリーあぜりあは、新島の西海岸伝いに北上して島の中央部に位置する本村の新島港に向かって航行していきますが、この間、右舷デッキからは新島南部の西海岸に連なる海食崖が間近に見えています。







おお、これは凄げぇ! 右舷デッキからすぐそこに見えている海食崖の断崖ですが、この断崖は過去の噴火で発生した「火砕サージ(火山灰と空気の混ざった高熱の爆風)」によって空中に放出された砕屑物が堆積してできたもので、遠目には煎餅のようなフライパンを伏せたような平べったい形で見えています。

しかし、断崖の高さは150〜200mもあり、ほとんど垂直なこの断崖を陸上から眺めることは困難ですが、船上からだと間近に眺めることができるんだよな! 新島というとサーフィンが盛んな島のイメージが強いですが、実は火山島であり、直近では886(仁和2)年に発生した大噴火が平安時代の「扶桑略記」に記録されています。







その後、フェリーあぜりあは「地内(じない)島」と新島港との間を通り抜けつつ、右に舵を切って新島港に接近していきます。

地内島は新島港の西およそ1.5kmに浮かぶ周囲2.6kmの無人島で、かつては樹木が生茂る緑の島でしたが、観光目的で放されたヤギやウサギ、サル、シカによって植物が食い荒らされて植生が破壊されてしまったそうです。

その後、ヤギとサルは絶滅し、シカはいったんは駆除されましたが、地内島から新島へと息も絶え絶えになりながら泳いで渡ったシカが増えてしまい、今度は新島で農作物を食い荒らしているのだそうです。人間が軽い気持ちで狭い島に外部の動物を放つと、たいていは生態系や植生が破壊されてしまう結果となりますが、ちなみにウサギについては生き残っているのかいないのかよく分かっていないみたいですよ。

なお、船上からは新島港と地内島の位置関係がイマイチ把握しにくいですが、新島西部に連なる海食崖の上にある「石山展望台」からは、両者の位置関係とフェリーあぜりあの航路が一目瞭然で見渡せる最高に素晴らしい「絶景」が広がっています。







さらに後方を眺めると、べた〜っと薄く平べったい形をした式根島が見えていました。その式根島の島影と重なってその先に見えているのが神津島で、台形をした天上山の山頂の形もはっきりと確認できますね。ちなみに画像右端に見えているのは地内島のすぐ南にある「大平島」と「ナダラ根」の岩礁群。







新島と地内島との間の海峡をすり抜けると、やがて右前方に新島港が見えてきました。港の先には新島北部にそびえる宮塚山が半島のように見えていますが、あの向こう側には若郷集落があって、そういえば本村〜若郷間には国内の島嶼トンネルとしては最長を誇る「平成新島トンネル(2878m)」があるんだよな。

新島を訪れたならばぜひとも通っておきたいトンネルですが、しかし、徒歩と足漕ぎペダル(原動機付きも含む!)は通行禁止なので、エンジン付き以外は1日3往復しかない無料の「ふれあいバス」に乗って通るしかないのでそのつもりでね。







新島到着30秒前。ペンキで記された「ようこそ新島へ Welcpme NIJIMA」の文字が懐かしいですが、岸壁にはすでにタラップがスタンバイされており、その背後には警視庁新島警察署のパトとお巡りさんも抜かりなく待機済み!

ちなみに新島における過去5年間の刑法犯の発生数は以下の通り。

2023(令和5)年 / 8件  2022(令和4)年 / 4件  2021(令和3)年 / 11件
2020(令和2)年 / 7件  2019(令和元年)年 / 3件

さすがに東京都内の犯罪発生件数と比較すると新島は平和ですね。2022(令和4)年には4件の犯罪が発生していますが、そのうち空き巣や出店荒らし、乗り物盗、ひったくり、スリ、万引きの発生はなんとゼロ! 

そりゃあ、島民が狭い島内で、同じ島民や観光客に対してドロボーや悪事を働いてバレたら、もう新島では生きていけないだろうし、また、島の外からやって来た者が島内で悪事を働いても、港で御用になる可能性が高いので犯罪発生率は低いです。







13時00分、フェリーあぜりあは定刻通りに新島に到着しました。出港時刻は13:10なので、寄港時間は10分間だけですが、その僅かな時間のうちに貨物の荷下ろしと、回送コンテナの積み込み作業が慌ただしく行われます。







ボオォ〜! 貨物の荷下ろしおよび積み込み作業と同時進行で新島への数少ない下船客を降ろし、そしてこれも申し訳程度であった新島からの乗船客を乗せ終わると、フェリーあぜりあは慌ただしく新島港を出港します。

新島出港時刻は13時10分で次はいよいよ利島寄港となりますが、利島到着予定時刻は14:40。ちなみに新島の北西に位置する利島までの距離はおよそ9kmですが、新島港〜利島港間の航路の距離はおよそ20km。

これは神津島港から式根島の野伏港までの距離とほぼ同じですが、所要時間は神津島〜式根島間50分に対して、新島〜利島間はなぜか1時間30分と倍近くなっていますが、その理由については・・・よく分からないっす。







さらば新島!「伊豆諸島の全ての林道を探索し終えた暁には、必ずやWRと共に再上陸しに戻ってくるかな!」と密かに誓いつつ、去り過ぎていく新島西海岸の景色を、そしてすでに洋上に見えている利島を眺めてデッキにたたずみます。







なんたる物凄い孤島感! その後、豊島へと向かうフェリーあぜりあの右舷に鋭く尖った三角形をした「鵜渡根(うどね)島」が現れます。鵜渡根島は新島と利島のちょうど中間地点に位置する周囲を切り立つ断崖で囲まれた周囲3.3km、面積0.4平方キロ、高さ208.9mの平地がほとんどない無人島。

ちなみに1893(明治26)〜1903(明治36)年の間に、夏場だけ新島からの移住者が養蚕を営んで住んでいたこともありましたが、現在は釣り師が遊漁船でたまに訪れるだけでもちろん無人状態。また、島内には「鵜渡根后(うとねきさき)明神」を祀る小さな祠と鳥居があって、地理院地図にもちゃんと神社マークが記載されています。







鵜渡根島を過ぎれば利島はもうすぐそこで、フェリーあぜりあは利島港に向かってまっしぐらです! あれよあれよという間に利島が近づいてきますが、いよいよ我が戦場が近づいてきたようで、うう、武者震いが止まらないぜぇ!







おお、この形、凄えな! 利島は北緯34度31分13秒、東経139度16分45秒に位置する直径約2.5km、周囲約8kmの火山島で標高は508(宮塚山)mですが、海面下の部分を含めると直径はおよそ5kmで海底から山頂までの比高は600mにもなります。

地質的には玄武岩質の溶岩や火山砕屑物が積み重なって形成された円錐状の火山、すなわち成層火山であり、そのことは円錐型をした島の形からも分かりますが、最新の噴火はおよそ9100〜4000年前。そしておおむね過去1万年以内に噴火したという理由によって、2003(平成15)年の「火山噴火予知連絡会」による活火山の定義の見直しにより、最近新たに活火山として認定されていますよっと。

そんな利島に唯一存在する「林道」は宮沢林道。コース的には標高508mの宮塚山北側の中腹、海抜250〜290mほどの高度で宮塚山をぐるっと半周しており、画像でいうと向かって左側の斜面の真ん中よし少し高い地点に位置しているのですが、いやぁ〜、実にとんでもねえ場所にある林道だぜぇ! おーし、待ってろよ、宮沢林道!







というわけで船内モニターで確認した利島到着間近のフェリーあぜりあの現在位置はここ。下田出港後、いったん神津島まで南下して、そこから今度は北に反転して利島に向かう航路がバッチリですが、このように恐ろしく遠回りするので所要時間が5時間もかかるのも納得ですね。

なお、モニターには「【利島】14:40着(定刻通り)」と表示されていますが、現在時刻は14:21なので、到着まではあと19分!







ちなみに伊豆諸島の海域を航行する船舶の刻一刻と変化する現在位置をリアルタイムで知りたい場合は、このようなウェブサイトもあります。

船舶マークをクリックすると船名、位置、進行方向などが表示されるので、眺めているだけで楽しいですが、これによって神新汽船のフェリーあぜりあをはじめ、東海汽船の高速ジェット船、橘丸、さるびあ丸、さらには伊豆七島海運の貨物船などの現在位置がリアルタイムで確認できるんだよな〜。

この画面では利島を出港して下田に向かうフェリーあぜりあが選択されて、その現在位置と船名が表示されていますが、それと同時刻にフェリーあぜりあの北東(右斜め上)およそ50kmには、大島の東の海上を北上する緑色の船舶マーク、すなわち神津島発東京行きのさるびあ丸の位置情報もちゃんと表示されています。







そして今回の利島林道探索ツーリングの日程についてですが、当初は3泊4日の進撃計画を立てていました。そして初日の今日(5 / 11)は快晴の予報でしたが、出発直前になって明日(5 / 12)は曇りで夕方から雨、さらに明後日(5 / 13)は強風で大雨、その次の日(5 / 14)も雨と強風の一日になることが判明!

今日と明日はまだいいものの、3日目と最終日は本降りの雨で島内探索できず、宿に閉じ込められることは確実であり、また、強風で帰りのフェリー欠航が危ぶまれたので、ならばと急遽予定を立て直し、利島滞在を1泊2日に短縮して明日、雨が降り出す前に豊島を撤退する弾丸計画を立てたんだよな!

おかげで利島滞在時間は短いです。林道探索も含めた島内探索に許された時間は、初日の今日は利島到着の14時40分から暗くなる前の18時くらいまでの3時間ほどと、明日は宿で目覚めてからフェリーあぜりあの利島出港時刻11:05(実際にはバイク輸送手続きのため9:30くらい)までの2時間くらい。

これが一般旅行だったならば、滞在時間が短すぎてお話にならないと思いますが、でも利島は周囲8kmほどしかない小さな島。きっとWRのエンジンがここぞとばかりに大活躍してくれるに違いないので、この僅かな滞在時間でたぶん大丈夫っす!







利島に接近したらフェリーあぜりあは南から北に向かって島の西側を回り込み、ぐるりと島を半周する形で利島で唯一の港、利島港を目指します。この時、右舷デッキからは島を取り囲む凄まじい断崖が見えているので必ず眺めておきましょう。







どひゃぁー、凄まじい断崖です! 眺めているのは利島のちょうど西端、地理院地図には「亀石」と岩礁名が記載されている場所ですが、目の前にそびえる宮塚山とその山頂から海に向かって落ち込む断崖の高さと言ったら!

ちなみに断崖の真上に白い建物が小さく見えていますが、その地点で標高は256.3m。白い建物はゴミ処理場くさいですが、すぐそばには国土地理院が管理する「電子基準点」が設置されていて、その脇を「利島一周道路」こと「東京都道228号利島循環線」が南北に走っています。

景色がダイナミック過ぎてスケール感がうまく掴めませんが、あの白い建物がある地点で宮塚山の高さのちょうど半分くらい。標高507.5mの山頂、すなわち円錐型をした利島のてっぺんまでは倍の高さがあり、こうして見上げると遥か上だなぁ!







続いて利島の真西から南端方向を振り返るように眺めてみますが、この付近は「コシダ崩れ」と呼ばれている辺り。1971(昭和46)年2月に利島南西麓で発しした大崩落の痕跡が残っていますが、島を取り囲む海食崖の断崖は島の北部から南西部に向かって高くなり、最大で330mにも達します。

利島を取り囲む海食崖の下に砂浜は発達せず、波の侵食で生じた大小の溶岩円礫の浜が続いていて、以前は波打ち際を歩いて島を一周できたらしいですが、現在はかなり危なくなっているので、命が惜しい方は絶対に止めておきましょう。

なお、落ち込むような断崖を覆っている緑はマサキやトベラなどの常緑低木。その上にタブノキやヤブニッケイの二次林が、そしてさらにその上、利島一道路が位置する辺りにヤブツバキの植林が広がっています。

利島といえば「椿」が有名で、島の全てがヤブツバキに覆われていると思われがちですが、ヤブツバキの植林地が広く広がっているのは比較的傾斜がなだらかな島の北側。南側はこのように地形が険しくて道がなく、そもそも植林ができないので、スダジイなどの常緑広葉樹や、その他の常緑低木の森が広がっているんですね。







そしてさらに後方を眺めると、左から順に平根、鵜渡根島、フヅシ根、新島の島影が見えていましたが、快晴時の伊豆諸島の海は本当にきれい。これではいやが上にも未だ見ぬ利島への旅情も大いに盛り上がりますなぁ!

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