2022 北海道林道探索ツーリング 8月16日(日)雨のち曇り 林道探索の書 〜今日もどこかで林道ざんまい〜 
20日目[7]  大樹町「晩成温泉 Bansei Onsen→ 大樹町「晩成温泉 Bansei Onsen もどる  






ガソリン給油量0L 給油回数0回 ガソリン代 0円 総走行距離  33.6 km / ダート走行距離 15.6 km トップへもどる


ガラガラな道881を晩成温泉目指してひた走ります。まるで無人境をゆくが如くガラ空きであった道道ですが、生花集落から晩成温泉までの距離はおよそ6.5km。それは東京駅から東海道本線で品川駅までの距離とほぼ同じですが、その間に対向車と1台すれ違うかすれ違わないかといった具合の通行量です。







晩成温泉へと戻りがてら、途中で左手に見えてくる生花苗沼に注ぐ「生花苗沼川」流域の広大な湿原の眺めです。遥か前方、見渡す限りヨシやマコモが生茂るその先の地平線付近に、白く輝く生花苗沼の沼面が僅かに見えていましたが、現在地はここですが、景色のスケールが大き過ぎてなんだか距離感がうまく掴めないですね。

なお、先ほど通った生花苗林道は、画像前方の右手から半島のように突き出た生花苗沼西岸の森の外周伝いに延びています。







晩成温泉まで戻ってきました。道路を挟んで右側に晩成の宿、左側に晩成温泉の建物が見えていますが、道路はここで行き止まりではなくて「ホロカヤントー」方向にさらに続いています。宿はすぐそこだし、時間は腐るほど有り余っているわで、晩成温泉を通り過ぎてそのまま進んでいくと・・・。







すぐに路面がダート化して左手に海が迫ってきます。荒涼とした海岸伝いに小砂利ダート続きますが、しかし、ここは林道ではなくて「町道湯の里線」。晩成温泉からホロカヤントーへと通じる延長距離1034mのショートな未舗装町道です。しかし、この時は遮る物なく海からビュービューと吹いてくる強風の勢いが物凄かったなぁ!







海岸伝いに少し進むとすぐに行手が二手に分かれますが、登り坂となった右手は再び晩成温泉へと戻る周回ルートの入口で、町道湯の里線はなおも海沿いに進む左手側。というわけでさらに海沿いの町道ダートを進もうとしますが、行手には赤円に白い横線の入った通行止め看板が・・・。

ここからホロカヤントーまでは僅か200mほどなのですが、海岸侵食の影響で町道はこの先で路肩崩落していてるようで、通行止めはそのためらしかったです。仕方ないのでここは右に進むことにしておきました。







町道のすぐ傍に迫る海。憂鬱げな曇空のもと、海風の強風に煽られてザザーン、ザザーンと激しく波が打ち寄せては引いていますが、潮騒がうるさいほどでした。







分岐を右に進んで砂利道の坂を駆け登ると、すぐにUターンする右急カーブ地点が現れますが、ここでは目前に荒波立つ太平洋がよく見えていました。







おお、こいつは凄げぇ! そのカーブ地点で振り返るとこんな感じ。すぐ背後に強風吹き荒ぶ太平洋が迫り、海岸ダートならではの素晴らしいワンシーンが!







カーブを曲がって坂道を登りきると台地となった開けた場所が現れますが、そこに粗末なレンガ積みの掘立小屋がありました。網や浮きをしまっておく漁業関係の資材小屋なのかと思いましたが、違うみたい。気になったので近づいてみると・・・?







 ホロカヤントー ワカサギ釣り場 料金所
時間 / 午前5時00分より午後4時00分まで
大人(中学生以上)/ 700円
小学生 / 300円
幼児 / 無料

大樹漁業協同組合
掘立小屋の正体はホロカヤントーのワカサギ釣りの「遊漁券売り場」でした。しかし、ホロカヤントーのワカサギ釣りの解禁期間は年末(12月30日)〜2月の下旬の冬だけ。なので夏のこの季節は訪れる人もいないし、遊漁券売り場も閉まっています。

ちなみにホロカヤントーでのワカサギ釣りは、氷面に穴を開けて釣り糸を垂らす「穴釣り」ですが、遊漁券売り場にトイレや水道はなく、穴開けドリルや釣り竿、のレンタルや釣り餌の販売はしていないのでそのつもりでね。と言っても、ワカサギ釣りのシーズンは真冬なので、北海道ツーリングとは縁のない話です。







なお、遊漁券売り場の傍には復元された「擦文時代」の住居跡があって、道を挟んだその先にワカサギ釣りのためのホロカヤントーへの入口があります。しかし、ここからだと海岸丘陵に隠れてホロカヤントーの水面は全く見えていなかったな。







案内板が掲げられているホロカヤントーへの入口。できればWR共々で水際まで行ってみたかったですが、生憎とそこには「車両侵入禁止」の立て札が設置されていてそれも叶わず、また、海からの強風が吹きまくる中でこの坂道を歩いて登っていくのが面倒くさくなってしまい、よってホロカヤントーを訪れるのはパス。

ちなみに沼への入口脇にある案内板ですが、普通はこの位置に立っていればどう見てもホロカヤントーの案内板だと思ってしまいますが、違いました。この案内板は復元された住居跡のものでした。







 北海道指定史跡 十勝ホロカヤントー竪穴軍
指定年月日 昭和41(1966)年7月7日

この遺跡は擦文文化期を主体とする竪穴住居跡の群落で南北約2キロメートルにわたって百数十を数え、
一辺の長さは5メートリ前後で方形に近く、
深さは50〜100センチ、外周は幅3メートルにわたって約10〜20センチ土盛りしてある。

出土品は擦文式土器が主体で、
少しではあるが土師系オホーツク式系とおもわれる土器が混在している。

石器は皆無に近く、金属器、動物骨格などが出土しており、
擦文文化を究明する上で貴重な遺跡である。

注意事項
本遺跡を無断発掘、損壊したものは、文化財保護法および北海道文化財保護法条例により、罰せられます。
大樹町教育委員会
なるほど。しかし、北海道の歴史は一部の地域を除けば、文献にほとんど記録がない時代、すなわち先史時代が今から僅か300年前まで続いていたことが特徴。つまり、遺跡はあっても文献で説明できる正体の知れた遺跡は少ないんだよな〜。

というわけでこの住居遺跡は、当初は和人(日本人)に追われたアイヌが、そのまた先住民である竪穴住居を作っていた「コロポックル」を追い払い、その結果、この地に残されたコロポックルの住居跡だと考えられていたとのこと。

ただし、この説は「アイヌが竪穴住居や土器を用いないこと」が前提ですが、その後の研究によってそれが疑わしくなり、現在ではコロポックルの遺跡ではなくて、文献に記録のない時代のアイヌの住居跡だとする考え方が一般化しているらしいです。







当初はコロポックル系先住民のものだと考えられていた竪穴住居。しかし、その後の研究でアイヌの住居跡だと考えるのが今では主流らしいです。住居の主人が誰だったのか諸説ありますが、住居が作られたのは「擦文(さつもん)時代」と呼ばれる本州では奈良や平安、鎌倉時代であった今からおよそ1400〜700年前の頃。

ちなみに十勝地方に歴史的史料が現れ始めるのは、慶長年間(1596〜1615)の松前藩による「トカチ場所」の設置および、1666(寛文6)年の「ビロウ場所」の設置以降のこと。先史時代に主として住んでいたのはアイヌの人たちですが、先述したように史料が存在していないので、はっきりしないことが多いそうですよ。







復元された竪穴住居の正面に回り込んでみると、藁葺きの屋根部分に穴が開いているのを発見。復元したのはいいけれど、海風に吹き晒しの場所に立っているので、これはかなり傷んでいる様子。なお、すぐ背後に細い鉄柱が1本立っていますが、あれは遺跡とは関係のない町の拡声スピーカだったような気がします。







 十勝ホロカヤントー竪穴群復元竪穴住居
この竪穴住居は約1000年前の文時代の住居を
昭和36(1961)年10月に、当時の北大医学部教授大場利夫氏、大樹高等学校長棚瀬善一氏が中心となり、
大樹高等学校の生徒の協力を得て
発掘調査(4ヶ所)した資料に基づき復元したものである。

北海道の他の地域と比べて特徴的なことは
壁ぎわに炉のあとがないことから漁期のみに住んだ夏の家であったと考えられる
またオホーツク式土器が出土しているところから、
オホーツク文化の太平洋沿岸における南限を示すものと言われている。

住居の規模
地上高 / 5.0m 間口 / 5.5m 奥行 / 5.5m
深さ / 1.1m 床面積 / 30.25平方メートル

大樹町教育委員会
へぇ〜、ここって漁をする夏の間限定で住んでいた別荘だったのか。しかし、考えてみればそれもそのはず。海風の吹き荒ぶ海辺のこのような場所に質素な藁葺きの住居。とてもじゃないけど、真冬は極寒でマジ死ぬし!







夏の別荘としてならば涼しくてかなり快適そうな竪穴住居ですが、住居の中から外を眺めるとこんな感じ。このような住居でアイヌの人たちや、コロポックルたちが具体的にどのような生活をしていたのか気になりますが、残念ながら、文字として残された史料そのものが存在していないんだよなぁ。







海を見晴らす台地の上に復元された先史時代の竪穴住居跡を眺めたら、今度こそ本当に晩成温泉に戻ります。行きがけに通った急カーブを下っていくと、すぐに右手から海岸侵食で通行止めに陥っている町道湯の里線が合流してきます。







そして町道湯の里線に復帰する直前の、見晴らしの効く急カーブ地点で右手の広尾町方面を眺めるとこの景色でした!

どんよりとした灰色の厚い雲が垂れ込める中、激しい海風で白波だった波が打ち寄せる海岸線がどこまでも連なり、その先には黒々とした水平線が広がっているだけ。はるか彼方の襟裳岬方面は水平線に霞んで全く見えていなかったです。しかし、吹き付ける海風の強いこと! ゴォ〜、ゴォ〜と響き渡る潮騒が海鳴りみたいでした。







あ、流木だ! うなるような潮騒が響き渡る海面を眺めていると、海風に激しく煽られて浜辺に打ち寄せる波間にプカプカと見え隠れする物体を発見しましたが、よく眺めるとそれは樹木の幹でした。どれほど海面を漂って、そしてどこから流されてきたのか不明ですが、やがて浜に打ち上げられることでしょう。







その後、町道湯の里線を引き返して晩成温泉まで戻ってきました。元々、今日は宿に閉じこもってニートしているつもりでしたが、生花苗沼ダートも走れてちょうどいい暇つぶしになりました。というわけで本日の外出はこれで終了!

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