2022 北海道林道探索ツーリング 8月15日(日)晴れのち曇り 林道探索の書 〜今日もどこかで林道ざんまい〜 
19日目[9]  上士幌町「糠平温泉 Nukabira Onsen→ 大樹町「晩成温泉 Bansei Onsen もどる  






ガソリン給油量 8.71L 給油回数3回 ガソリン代 1485円 総走行距離 242.0 km / ダート走行距離 20.8 km トップへもどる


湖面と外海とを隔てる砂州の先端を眺めたら、遠くに小さく見えているレストハウスに引き返しますが、こうして眺めると、左の長節湖と右の太平洋とに挟まれた狭い砂州の状況が一目瞭然。この辺りで幅はだいた100mくらい。







レストハウスまで戻って来たら、長節湖の湖畔側に広がる「大津海岸長節湖畔野生植物群落」を眺めてみました。長ったらしい名称ですが、大津海岸長節湖畔野生植物群落は1863(昭和38)年に北海道指定の天然記念物に指定されたいわゆる原生花園。

長節湖の静かなたたずまいと相まって北方的な景観が広がり、膝丈の高さで茂った草叢には草花の可憐な花が咲き、ここにはハマナスの亜種で白い花を咲かせる「シロバナハマナス」が自生しているそうです。しかし、残念ながら訪れた時には、どこにもその姿を見つけることはできなかったなぁ。







うほっ、足元には熟した野生の果実がてんこ盛りに! ぷるんぷるんに弾けそうな朱色をしたハマナスの果実、そして水々しい真紅のベリーがたわわに実っているのを見かけました。摘み取れば美味しいジャムが大量に作れそうでしたが、でも残念。ここから自宅まで腐らせずに持ち帰る術がないっす・・・。







長節湖の景色を眺めたら道912でR336に戻って「大樹町」へとに進み、大樹町「生花」で道1051へと左折。広大な湿地の景色を眺めながら道沿いに進んで海岸を目指し、今度は十勝海岸湖沼群の1つである隣の湧洞沼を訪れてみます。

湧洞沼も先ほどの長節湖と同じく細長い砂州で外海と隔てられたラグーン(海跡湖)ですが、砂州の長さはおよそ3.6km。砂州は対岸につながっていますが、道は途中で行き止まりになっており、湧洞沼の景色を眺めつつ行けるところまで進んでみようというというわけです。







湧洞沼と外海を隔てる砂州は最大で幅700m、狭い地点でだいたい300mくらい。現在、道1051を行き止まり地点に向かって進んでいきますが、それにしてもまるで無人境をゆくが如くのガラ空き具合であった道1051、素敵です!

ちなみに砂州は海抜が最大で6mほどしかないため、道すがらに水辺の景色はほとんど見えておらず、ひたすら地平線に向かって突き進むような感じかな。







寂寥感溢れる砂州上の海岸草原をひた走り、ようやく道1051の終点に到着。しかし、周囲にはなにもなくて、ただぽつんと淋しく「行き止まり Dead end」の標識が淋しく立っているだけだったかな。

なお、現在はその痕跡は全くありませんが、昭和の中期頃には砂州と沼畔にはバンガローや売店があって、キャンプや釣り、ボート遊びの年間3万人もの利用者で賑わっていたそうですが、今の景色からはちょっと信じられませんけどね。







お、その先へと続くダートの入口を発見! 道881の終点は砂利敷きの回転場になっていましたが、道はそこで途切れているのではなくて、厳密にはダート状態でさらにその先へと続いていたことが判明。地理院地図には記載されていませんが、ダートは先細りしていく砂州の上に300mほどの長さで延びているようです。







道道の終点からさらに砂州を進んでいくワダチダート。そのままエンジン付きで敵陣に突っ込もうかとも思いましたが、しかし、その先は至る所で蟻地獄のような砂溜まりが形成されていたので断念。それに砂州に広がる原生花園を踏み荒らすのは忍びないので、ここは潔く徒歩に切り替えて進むことにしておきます。







そういうわけで歩いてダートを進んでいきますが、途中で草地を歩いて砂州の海側の浜辺に出てみました。眺めているのは左手となる北東方向。およそ10km先には長節湖が位置していますが、水平線と空の境界も定かではなく、太平洋に面した砂州の砂浜が果てしなく続いているだけ。見事なまでになにもありません。







ざーん、ざざーん。太平洋の波が静かに押し寄せては引いていく砂州の静かな浜。光り輝く真夏の太陽と紺碧の海・・・も良いですが、そこに広がっていたのは今にも泣き出しそうな鉛色の空と海。しかし、寂寥感溢れるこんな景色も味わい深いぜぇ。







こちらは浜の右手、すなわち南西方向の眺め。およそ3km先には生花苗沼が位置していますが、ここからは全く見えていませんでした。景色を汚す釣り師の目障りな釣竿も見当たらず、流木の打ち寄せる静かな砂浜がどこまでも続きます。







砂州を形成する足元の砂。これらの砂は元々は河川から海に運ばれたもので、それが長い歳月の経過の間に津波や高潮によって堆積したもの。波打ち際では濡れているので黒砂っぽく見えていますが、乾いた砂は普通に白っぽかったな。







海を眺めたら次は砂州を反対側に横切って湧洞沼を眺めてみます。沼の北部に広がる泥炭湿原から流入する腐植水のため沼水は薄緑褐色をしていますが、砂州で海と隔てられた沼面はさざ波一つなくてとても静かなたたずまい。

そんな湧洞沼は周囲17.8kmで面積は3.49平方km。最大深度は3.5mですが、砂州が切れて外海と繋がる時があることから、それによって水位が多少変動し、また周囲の長さも僅かに変化することが知られています。

また、沼には天然のヤマトシジミやキタノオオノガイ、シラトリガイが生息し、魚類としては通年生息するウグイやワカサギ、フナやヌマガレイ、成長過程の一時期のみ湧洞沼で過ごすサケやアメマス、イトヨ、そして砂州が切れた時に外海から入り込むシシャモやキュウリウオ、イワシなどが確認されているのだとか。







その後、さらに進むと砂州は一気に先細りしてしまい、砂州をゆくワダチダートは原生花園の草薮に埋れて自然消滅。道は消滅しましたが、そのまま構わずさらに草薮を掻き分けて歩いていくと、やがて湧洞沼の南端地点が見えてきました。

そこでは糸のように細くなった砂州が辛うじて外海と沼とを隔てているのが見えていましたが、状況をもっとよく確認するためにさらに近づいてみます。







そしてここが湧洞沼と外海とを隔てる砂州が最も狭まった地点。すなわち湧洞沼の真の最南端です。平常時はこのように砂州も繋がっていますが、春と秋の河川増水時には砂州が切れて海への開口部が現れて海水が沼に流入することがあるんですね。

海への開口部が出現している期間は十数日ほどで、その後再び自然に閉じられるそうですが、近年ではその日数が短縮してきているらしいです。







さらに砂州をよく眺めてみると、おお、いるわいるわ! ちょこまかと歩くのが最高に早いチドリ系の小鳥が集団で羽を休めていましたよ。

ちなみに、このように砂州が繋がった状態でも海が時化ると、海水が砂州を超えて沼に流入することがあるそうで、砂州の上に散乱する無数の流木はその時に打ち上げられたのでしょう。そういう現象が起こるので、通常は海と繋がっていないにもかかわらず、湧洞沼は低層に常に海水が滞留する「汽水湖」とされているんですね。







湧洞沼最南端の砂州を眺めたら、回れ右して砂州の上に発達した淋しい海岸草原を眺めながら引き返します。

といってもぱっと見してただの草腹ですが、海岸草原の特徴としては、砂州の砂浜に面した前面には移動する翔砂に対する抵抗力が強いハマニンニクとかコウボウムギが群落し、その後方には飛砂の影響が減少して海風の影響が弱まるのでハマナスやナガハグサが群落しているらしいです。







うむ、これはキク科のシロヨモギだな。まるで白いペンキを浴びたかのような色合いをしていますが、白く見えているのは綿毛らしいです。北海道から東北北部の日当たりが良い海岸の砂地に生息しますが、生息地が少なくて個体数も少ないです。







これはたぶんムラサキ科のハマベンケイソウ。海岸の砂地や礫地などで生育し、青紫色の小さな花を下向けに数個つけて咲くそうです。英名は「Oyster leaf」といい、その名のごとく葉を食べると生牡蠣のような味がして、フランスでは食用にされているんだって。気になる方は摘み取って食べてみてください。

極めて稀に栽培された物が売られていることがありますが、お値段はかなり高く、本州では個体数が少ないので採取が禁止されている県もあるのだとか。







「!?」一瞬、赤紫色をしたこいつはなんであるのか頭を傾げてしまいますが、これはセリ科のハマボウフウの花。ハマボウフウの若芽や新芽は食用となり、刺身のツマや酢味噌和え、天ぷらなどで食され、かつては薬草として風邪の発熱、頭痛、関節痛などに用いられ、根を煮出した液はお風呂に入れると湯冷めしないらしいですよ。

ただし、近年は砂浜の浸食や乱獲で自生地が激減。福島県では絶滅危惧IIとしてレッデデータブックにも記載されていたりします。







おお、淡い檸檬色をした小さな花が可憐なウンランの花を見つけました。ゴマノハグサ科のウンランは海岸の砂地を好み、海辺に自生して蘭に似た花を咲かせるので「海蘭」と書くそうです。北海道から本州の砂浜に生育しますが、本州では海岸の護岸工事や人為的な砂浜の撹乱によって急激にその数が減っているとのこと。







本州の海岸ではあまり見かけなくなったレアな海浜植物を眺めつつ、のんびりと海岸草原のワダチダートを引き返しますが、路面は非常にモッサリとした砂溜まりができていて、ちょっと歩くだけで靴下が砂塗れになるような状態。もしも2輪で立ち入ったならばスタック確実であり、とてもじゃないけどやってられん状況かと・・・。







うわぉ、淡い薔薇色をした可憐なハマナスの花が緑に映えて最高に美しいな! よく眺めると花弁をくるくるっと巻いて閉じた状態の蕾が付いていましたが、蕾の深い真紅もまた驚くほどに美しいぜぇ!







しかし、美しい砂州の原生花園には無数の乞食小屋が・・・。これ、おそらくアキアジ目当ての強欲な釣り師が場所取りで違法に立てた禁止されている不法占有物ですが、かつての多摩川河川敷じゃあるまいし、ブルーシートで屋根掛けした掘立小屋の汚らしいことと言ったら! 豊頃町さん、有無を言わさず強制撤去をお願いします!







釣り師のルンペン小屋が点在する浜辺を後にして、今度は砂州を挟んで反対側となる湧洞沼の水際を眺めてみると、およそ270mほどの対岸には湧洞沼でワカサギ漁やエビ漁を行う漁師さんの番屋や倉庫が見えています。

ちなみに湧洞沼ではウグイやワカサギ、ヌマガレイ、ヨコエビなどを対象とした内水面漁業権が大津漁業協同組合によって設定されていて、年間10tほどの漁獲があるとのことらしいです。でも沼に生息するシジミには漁業権が設定されていないので、シジミ採りをしても逮捕はされないので安心してくださいね。

なお、以前はここから対岸まで渡し舟があったそうですが、今はそれも遠い昔話。現在、対岸の番屋まで行くには湧洞沼をぐるっと回り込む必要があって、信じられないことに25kmにもおよぶ長距離迂回を強いられます。今日は対岸に行くつもりはないですが、明日は1日フリーなので行ってみようかな〜。

もどる ][ 19日目[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10]へ ]